夢と現実いったりきたり

宙組 ミュージカル・ロマン 『大逆転裁判』-新・蘇る真実-

@KAAT 神奈川芸術劇場

 

STORY

弁護士を志す大学生・成歩堂龍ノ介は、最新の司法制度を学ぶ為、明治時代の大日本帝国から万国博覧会を目前に控えた大英帝国への留学を果たす。次々と難事件に巻き込まれていく龍ノ介は、法務助士の寿沙都らと共に依頼人の為に立ち上がるが、そこに世紀の大探偵シャーロック・ホームズが現れ…。「異議あり!」の名台詞から、絶体絶命のピンチを覆していく痛快法廷バトル、この夏、新たな真実が蘇る!

 

感想

 とにかく原作ゲームのファンなので、入場して幕を見たときに宝塚初見のひとみたいな気持ちになった。陪審員として観てるみたい! ってどきどきしながらはしゃいだ。

 龍ノ介がバーンと登場した時点でグッときてしまって、これだけでこうなってたらまずいぞ……と思っていたら、プロローグでメインキャラが横並びで出て来たところで感極まって誇張表現でなく涙が出てきて、こんなに「好きな原作が舞台化されたおたくの限界の反応」になることあるんだなと思った。スサトさんとアソウギが踊ってるのとか、そこに龍ノ介が加わって3人で踊るのとか、それだけで嗚咽が漏れそうになったし……限界すぎる。というわけで、あんまり冷静に観られていない。

 

 脚本はすごくゲームの言い回しだなあ、と感じることが多くて、ちゃんと「大逆転裁判」であることは間違いないんだけど、ゲームをオートプレイかRTA動画で見ているようなテンポ感があんまり自分に合わず。特に1幕は説明要素が詰め込まれてる感じがあった。台詞と台詞の間のつなぎがぎこちないというか。自分がゲームをプレイするときに好きにタップする分には前後のパラグラフのつながりも気にしないんだけど、お芝居の脚本に落とすときには流れを大切にしてほしかった。ゲームの要素を取り入れることを優先して表現が単調になっていたり、結果間延び感が出てしまった場面もあったと思う。2.5次元作品なんかで感じるジレンマというか、「メディアミックスになにを求めるか」問題だなあと思った。

 キャラクターのモーションもかなり再現されていて、ゲームちっくな芝居(しかも逆裁シリーズは誇張/過剰表現が多いし)と宝塚の過剰さは親和性が高いんだなと思った。けど、ここはちょっとハマってないな〜と思うところもあったから塩梅が難しい……。

 

 龍ノ介とスサトさんの恋愛要素は正直いらなかったかな……。龍スサパートになると途端に知らないキャラになるというか。龍ノ介/スサトさんはそんなこと言わない/やらない! って思ってしまって、よくない原作オタク仕草だなと思いつつ……。恋愛要素が入ることで、スサトさんの「能力や知識的にはものすごく優秀なのに女性というだけで弁護士として法廷に立てない人」という立場が軽んじられているように見えたのが嫌だったのかも。その立場を理解したうえで尊重するアソウギ、そこはあんまり意識してないものの固定観念にとらわれていない龍ノ介、という3人のバランスが「大逆転裁判」を愛する理由のひとつなので、恋愛要素よりも3人での場面が欲しかった。もちろん、アソウギと龍ノ介の親友コンビの絆も好きなんだけど、アソウギとスサトさんの関係性も含めて優劣のつけられない絆だと思ってるから。アソウギのエピソードを入れ込むのは難儀なのはわかっていますが。

 

 最後に英国が選ぶ、「間違えたことはきちんと見直して、反省して、『ただしい』道を選んでいくことで平和を実現する」という選択は、いまの世界情勢(もちろん国内情勢に関しても)に対してのメッセージとして受け取れてよかったなと思う。