夢と現実いったりきたり

ミュージカル『スクールオブロック』

@東京建物Brilliaホール

 

CAST

柿澤/梶/宮澤/コード

柿澤/太田/はいだ/コード

 

STORY

マチュアロックバンドのギタリストのデューイ(西川貴教柿澤勇人)は心からロックを愛する男だったが、その熱すぎる情熱と勝手なパフォーマンスが原因でバンドをクビになってしまう。友人ネッド(梶 裕貴/太田基裕)のアパートに居候しているデューイだが、貧乏で家賃すら払えず、ネッドの恋人パティ(はいだしょうこ宮澤佐江)と喧嘩し住む場所も無くなりそうな最悪な状況に。そんな時、ネッドに私立学校の臨時教師の話が舞い込み、仕事が欲しかったデューイはネッドになりすまして名門ホレス・グリーン学院へと向かう。
厳格なロザリー校長(濱田めぐみ)のもとエリート進学校として名高いホレス・グリーン学院だが、デューイは厳格な規律の多い学校で過ごす子供たちが無気力な事に気がつき、さらに担任したクラスの子供たちに音楽の才能があることも見つけ、子供たちとバンドを組んでバンドバトルに出場することを思いつく。そして、学校や親に気づかれぬよう、授業と称して子供たちにロックのあらゆることを教え始める。クラシックしか耳にしたことがないような生徒たちは、最初は困惑していたが、やがてデューイの陽気な人柄やロックの開放感、ありのままの自分を認めてくれるデューイに魅力を感じはじめ、一緒にバンドバトルを目指して猛練習を始める。ある日、デューイが偽物教師だということがバレてしまうが、デューイとのロックを通し変わり始める子ども達の変化は、周囲の大人たちをも変えていくことになる。

 

感想

 家を出る前に改めて券面を見たら、チケット代14,500円!? と二度見してしまった。もう、大きめの興行のチケット代に二の足を踏むようになってしまった。貧しい……。

 上演前・幕間・終演後の場内撮影とカテコの撮影がOKだけど、撮影媒体はスマートフォンに限るというのが不思議なレギュレーションだなと思った。カテコ撮影OKの合図のときに柿澤さんが一眼だと毛穴とかうつっちゃうから〜みたいなことを言ってたけれど、本当はどういう理由なんだろう。機材を揃えて撮られると闇写的な商売が出てくる……とかしか思いつかないけど、きょうびスマホの画質もなめられないよな?とか余計なことを考えてしまった。上演前のスクリーンは正直ださいんだけど、BlurとかThe WhoとかThe Smithの名前が浮かび上がったときはさすがに撮った。

 

 ストーリーはけっこう古典的、というのが悪ければ王道で、デューイのキャラクター造形を含めて少し古さも感じたけど(映画は20年前、舞台化も10年前とかなので、そこは納得する)、問答無用の音楽の楽しさが勝ってしまう。子役のエネルギーと演奏に圧倒されるし。わたしはほんの一部しかわからなかったけれど、ロックミュージックへのオマージュが散りばめられてたりしていて、しっかりとロックを知っていたらもっともっと楽しいだろうなと思った。MR!もそうだったように、椅子に座っておとなしく観ているとむずむずしてくるようなミュージカルだった。こちらを観客としてあつかう演出もあったから余計に、本来立ち上がって歓声をあげて観るものだなあと思った。

 

 デューイのやり方や考えを全面的に支持することはできないけれど、「自分たちの〈怒り〉を解放しろ」というメッセージは響いてくる。各家庭の問題やデューイ自身の問題がころっと解決して大団円になる……という、決して細やかとは言えないストーリーも、とはいえグッとくるよねえと思ってしまうというのはつまり、作品を通して「ロックンロールの魔法」を体感できるようになっているというのがこの作品の意図であり、最大の魅力ということなんだろうなと思った。

 『ハルシオン・デイズ』が好きではなかった、かつ、それはないだろう……という価値観の作品だったから、鴻上さんに対して構えていたし、今作で鴻上さんへの評価が変わった、というわけではない。劇中にゲイの夫夫(と思われる)が出てくるけれど、『ハルシオン〜』のゲイ表象がよぎって渋い顔になってしまった。個人的に、スクリーンに映像をうつして背景をつくっていると、もうそれだけで萎えてしまうくらい映像演出が苦手。白っぽいのっぺりした映像が出てくるのが問答無用でださいと思ってしまう。場転が結構あるからかもしれないけれど、デューイの部屋のポスターなんかは紙の質感で見たかったなあと。

 縦長の劇場なのに縦には使わないんだな〜と思った。セットなんかはがっつり上まで作ってあったけど、人が縦に移動することはないので、空間を持て余しているような気もした。

 

 今回のプロダクションだと、劇中がいつ設定なのかというところは少し気になった。「スマホを勝手に見るな!」という台詞も入っているから現代っぽいけど……まあそこまで気にしながら観るものでもないかも。「ロックンロールは反体制の精神」という、作品をつらぬく思想が2023年の日本ではもう「そうではない」な、ということを考えてしまうから気になってしまうのかな。反体制と結びつく音楽ってヒップホップのがしっくりくる。

 ロイドウェバーの天の声で幕開きなのがちょっと面白くて、BWでもそうなのかな? と思って調べたら、なんなら本人が登場して口上を述べてた……と書いてあるブログを見つけて笑ってしまった。面白作曲家ロイドウェバーおいたん。♪ If Only You Would Listenみたいな曲を好きになってしまうよロイドウェバー。

 

 もっくんネッドがいちばんおもしろい。もっくんってスタイルもよくてかっこいいのに、こういう役どころが本当にぴったりはまってておもしろい。そういえばこのひとギャ男だったということを思い出しました。