Intro
気がつけばもう師走も目前(このエントリを書き始めたときはそうだったのです)。年々、1年が過ぎ去るのが早くなっているような気がする。そして毎年まとめエントリを書くときに来年こそはちゃんとブログを……と誓いを立てているのに実行できていない。気のせいではなく。Twitterが終了するかも、みたいな噂があったりなかったりするけれど、万が一そうなったらいつか若手俳優カテゴリで書いていた人たちもはてなブログに戻ってきたりするのでしょうか。ブログは面白い文化なのでそれはそれで楽しいと思います。
Review
1月
劇団柿喰う客「空鉄砲」@ザ・スズナリ
柿で観劇初め。非常におめでたいことです。3人芝居なのだけど、ものすごく「柿を観た!!!」という満足感と濃密度の芝居だった。同じ柿の『美少年』観たときと近い感覚かなあ。全員好きな役者。柿喰う客の主宰であり脚本演出を務める中屋敷さんは平素からBLが好きだとアピールしているのだけど、本当に好きなんだろうな……としみじみ感じた。BLの要素が詰め込まれていたというより、すべての文脈がBLというか。「安藤政信」と「綾野剛」が出てくるのは「わかってる」じゃん。BLギャグじゃん。ずるくない? アフトーのときに「大人の柿喰う客をやりたい、しっとりしたものを作りたい」って言ってできたのが『空鉄砲』だと言っていて、わかるけどわからないんだよなってなって最高でした。パンフを読んだら「この人と全然思想合わない!!!」ってなるのに芝居は超面白いのなんなんだろう。恋はミステリー。
▲Kissミスを歌う穂先くんを長時間見てたら始まってしまいそうになったので(恋が)そっと目をそらしました
モダンスイマーズ「だからビリーは東京で」@シアターイースト
シンプルに号泣した。上京した地方出身者だから余計に刺さったんだと思うんだけど、ひとりの演劇を観る人間としても泣いた。『ビリー・エリオット』自体は観たことがないくせにホリプロコンで♪エレクトリシティを聴いて号泣したことがあるんだけど、やっぱり「何か」に出会ったときの身体に電気が走るような感覚ってあるじゃないですか。田舎の閉塞感に息が詰まりそうになってるときにそこから連れ出してくれるようなものに出会ったらなおさら。田舎特有のあの、娯楽が酒と女とギャンブルしかない感じのリアルさがうまくてキツかった……。コロナ禍を念頭に作られた作品でうまくハマるものがこれまで無かったんだけど、これに関してはいまのこの時代に観られてよかったとしみじみ思えた。
宝塚歌劇団雪組「Sweet Little Rock'n' Roll」@宝塚バウホール
2月
「The View Upstairs 君が見た、あの日」@日本青年館ホール
序盤からずっとデールのことが気になっていて、デール中心で観てしまったからやり切れなかった。社会から弾かれているコミュニティ、の中でさらに爪弾きにされている存在を認識しているのに、楽しそうにしている他の人たちのことを楽しく観れるかって言われたら難しい。楽しそうに盛り上がっているみんなの輪から追い払われて、誰からも話を聞いてもらえない。それだけじゃなくて、同じことをやっていても許されるパトリックがコミュニティ内にいるっていう残酷さ。
だから観劇後にもやもやが残ってしまって、期待値ほどは自分に響いてないんだと思ったのだけど、実際に起きた事件、だけど(ゲイコミュニティのことだから、という理由で)当時は顧みられなかった事件をこうして描き直すことによって、観客がキャラクターをいとしく思ったり、わたしのようにデールのことをやり切れなく思ったりする、ということこそがこの作品のねらいのように思えるので、結果的に響いているのかもしれない。
3月
宝塚歌劇団雪組「夢介千両みやげ/Sensational!!」@宝塚大劇場
4月
ミュージカル「ブラッド・ブラザーズ」@東京国際フォーラムホールC
自分でも驚くほどダメだった。コンセプトとしては好みな感じなのに全然面白くなかった……。1幕終わりの時点で曲もいまいちでストーリーが面白くなる予感もなくて、これは???と思ったのだけど(全体で面白ければいいのかもしれないけど、幕間挟む場合は1幕である程度惹きつけてほしい)、最後まで観てもいまいち乗り切れず。ふたりの母親役の堀内さんが本当に素晴らしくて、「兄弟の話」じゃなくて「母親の話」として構築されていたら面白かったのかも。
ストーリーがいまいちだったのとはまた別で、演出が無駄に不快だった。エディとの対比でミッキーたちの貧困を見せたいのはわかるけど、無駄な不快さだと思う。木南晴夏への貧乳いじりとか演者にお尻を出させるのとかも嫌だった。演出家としての吉田鋼太郎を全然信用できてないです。あと単純に音で観客をびっくりさせるタイプの演出がとても苦手。銃社会のアメリカで上演したときとかどう演出されてたんだろう。
人生に絶望したりヤク漬けになったり破滅していく役どころの柿澤さんはわかるけど、薬物依存症の支援団体とかからクレーム来ていいくらい雑な描写だとも思う。
宝塚歌劇団宙組「Never Say Goodbye」@東京宝塚劇場
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/neversaygoodbye/index.html
奇しくも上演された時勢が時勢というのもあって*1、扱っているテーマに対しての話の軽さが余計に目立ってしまっていた。ジョルジュのように逃げずに立ち向かう=戦争へ身を投じることがかっこよく、逆に逃げるのはずるく描かれるあたりを無批判に受け入れることができない。民衆に簡単に「イデオロギーは不要」と言わせてしまうのも危ういと思う。芸術や生活が戦争によって覆われていく描写も、現代の自分たちから決して遠い話ではないのできつい。でもフィナーレの真風さんは銀河一カッコイイんだ。桜木ずんさんともえこちゃんの男役としての色のちがいもよくて視線が定まらなくて困っちゃったよ……。宙組のファンなのかもしれない。
「アンチポデス」@新国立劇場小劇場
亀田さんという役者から逃れられない。絶対に働きたくない職場だな……と思いながら観た。新しい物語を作り出すために個人のリアルな体験を「物語」として語ることを迫る、そしてその手始めに語られるのが各人の性体験についてというのが、特に昨今のもろもろを考えると余計に嫌だった。性体験に限らず、人生を「物語」として語ったり、それに対して面白い/面白くないという評価をくだすことの暴力性についてダニーM2が心境を吐露したあとの空気のしらけかた、ついにはあの場から退場させられるのが本当に嫌なリアルさで……。あのやり方で面白いものなんてできるわけないじゃん、って思わせられる最悪の職場。
わたしが気になった人物はダニーM2とエレノアとサラ。いつも笑顔で元気なように見えるサラが自分の体験について話す時、ファンタジックなおとぎ話に置き換えて話すのが、「物語」に救われて生きてきた子なんだなと思う。ただ、現実に対する防衛としての「物語」が日常に侵食して「嘘」をつきつづけてるようすには胸が痛くなるけど、あの職場じゃしょうがないな……。みんな「新しくて面白い物語」を生み出すことを目的に自分自身を切り売りしてぐちゃぐちゃになって、結果チームは座礁するわけだけど(最悪の職場だから当たり前)、そこまてしてなんで「物語」を作ろうとするのかっていうと「好きだから」というシンプルな理由に帰結するのはそれはそうなんですが。エレノアが持ってくる宝箱に入っていた、子供時代の衒いのない「物語」にみんな聞き入るようすに、どんな人をも「物語」が救えるのかもしれない、という希望を描きたかったのかなと思う。宝箱の見つかり方も含めて、パンドラの箱の最後に残った希望のようなものとしての「物語」。
5月
劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎「神州無頼街」@東京建物Brilliaホール
宮野真守に光の男をやらせて福士蒼汰の陰を照らしたうえに子育てBLをやるんだな……前半はまあわかるけど後半はわからんやつ、という身も蓋もないことを思った。それだけじゃなくていろいろ渋滞してるんだけど、渋滞してるわりに全然刺さらなくて、もしかしたら新感線とは肌が合わないのかもなと思った。髑髏城はけっこう好きだったんだけど。
設定だけ見たら好きな感じのキャラクター/関係性だと思うんなけど、出力されてくるものが自分のツボとはことごとく違う。好きな人はたまらなく好きだろうなというのもわかるんだけど。キャラクターがさくっと自己開示したり人を信用したりするネアカっぷりが自分にとっては物足りないんじゃないかと思った。
「ロビーヒーロー」@新国立劇場小劇場
中村蒼先生in新国立。やっぱりワンシチュエーションの会話劇が好きだなということを再確認した。観たものをリアルタイムにきっちり記録しておかないと、半年経っちゃうとなかなか具体的な感想が出せないな……。Twitterに残っていたものを転記しておきます。
作中のジェフがそうであるように明確にこう、っていう判断を簡単に下せる話でもなく……。面白かったんだけどまあまあキツかった。ウィリアムの弟の件も、ウィリアムが黒人であることを考えるとかなりキツいんだけど、そういう現実の問題について、日本で上演する際にどこまで「当たり前の背景/前提」として戯曲を補えているんだろう、そして制作側はどこまで説明すべきなんだろう、っていうのも考えてしまった。少なくとも観客側が「知っておく」努力は普段からあるべきだなとは思うけど。あと、中村蒼先生が好きです。
宝塚歌劇団月組「Rain On Neptune」@舞浜アンフィシアター
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/rainonneptune/index.html
どうしても月組を生で観せたい知人のためにチケットを工面した。完全なるお節介です。谷貴矢先生の作品は新感線と同様「自分とはツボが合わない」と思ってるんだけど、RoNは体験としての良さがあった。脚本がよく練られてるという方向ではなく、「舞浜アンフィシアターという東京ディズニーリゾートのお膝元で(かつ舞台機構と時間の制約がある中で)上演する作品」として、かなり良い。
ネプチューンのことをトリトンが「俺のもの」、シャトーが「盗んでみせる」と言うところ(しかも畳みかけるように)では、あからさまなモノ扱いに焦ったけど、ネプチューンと宝石たちが文字の通りの「モノ」から自分の意志をもつ個人になる話だから、おそらくわざとそういう台詞なんでしょう。ネプチューンは自分の意志で地球に行くからシャトーに「盗まれた」わけじゃないし、最後にトリトンがリュミエールのクローンであるネプチューンを「娘」と言うのも、ネプチューンを「妻のクローン」としてではなく自分の生み出した「ネプチューン」という別個の個人として認めたってことだし、そのあたりのバランス感覚が良いと思う。
ちなつさんがネアカのソフィ・アンダーソンみたいになってたのもウケた。ネアカのソフィ・アンダーソンはソフィ・アンダーソンではないのだが……。
個人的に、歌声がとても素敵だなと思っていた一乃凜さんの歌が聞けたのもうれしかった。
NCT127 「NEO CITY:JAPAN -THE LINK」@東京ドーム
宝塚歌劇団雪組「夢介千両みやげ/Sensational!!」@東京宝塚劇場
6月
宝塚歌劇団雪組「夢介千両みやげ/Sensational!!」@東京宝塚劇場
宝塚歌劇団宙組「FLY WITH ME」@東京ガーデンシアター
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/flywithme/index.html
現時点で2022年最高に楽しかった現場第1位の『FLY WITH ME』。レーザーがんがんに炊かれると血が騒ぐ。LDHに関しては表面的にだけどわりと知っている方だからクロスオーバーという点でも面白かったし、「タカラヅカ」をやっているときの野口先生のファンだから楽しかった。いま「タカラヅカ」の再構築をやらせたら野口先生の右に出る演出家いないと思ってるから。
真風さんと潤花ちゃんは個人としてもトップコンビとしてもとても好ましく見ているふたりなので、おのおのの良さもコンビとしての良さも存分に楽しめてうれしかった。
ちなみに『FLW WITH ME』でやってほしいLDHの曲リストを友達と作っていたのですが、なんと1曲もセトリ入りなりませんでした。♪ふたつの唇か♪Lovers Againは入ると思ってたというか歌ってほしかったよ……。
宝塚歌劇団宙組「カルト・ワイン」@東京建物Brilliaホール
NCT127 「NEO CITY:JAPAN -THE LINK」@京セラドーム大阪
7月
宝塚歌劇団星組「めぐり会いは再び next generation -真夜中の依頼人-/Gran Cantante!!」@東京宝塚劇場
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/meguriainextgeneration/index.html
めずらしく芝居とショーどっちも合わなくて、消化不良なまま劇場をあとにした。メタ的な構造は好きだけど内輪ノリが好きではないので、(星組にあまり明るくないのもあるけど)『めぐり会い〜』はまずその点でつらかった。
この人にこの台詞を言わせたい、この設定をつけたい、この画を見せたい、というのが全部ストレートに伝わってくるんだけど、それって結局きっちり作品にまで落とし込めてないということだと思うし、やりたいことがつぎはぎになっているのが観ていてちょっとしんどい感じ。ただ、美穂圭子さまが歌いはじめたときはうれしすぎてリアルにマスクの中で歯茎剥き出しにして笑ってしまった。最高のディーヴァ……。
藤井先生のショーは好きなところと苦手なところがきっぱり分かれるんだけど、今回のショーは苦手な要素ばっかり詰め込まれた感じでとてもつらかった。
宝塚歌劇団雪組「ODYSSEY - The Age of Discovery-」@梅田芸術劇場メインホール
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/odyssey_umegei/index.html
夏だ祭りだ野口ショーだ、ということで、やっぱり野口先生のやる「タカラヅカ」のファンだから、2幕のタカラヅカ全部やったんで〜のターンが楽しすぎた。1幕終わりにさききわといえば!な『SUPER VOYAGER!』の《海の見える街》のアンサーというかリプライズというか、あれを再構築したものを持ってくるのはずるいじゃん。やっぱり野口先生は「再構築」がめっちゃうまいのかもしれない。
あんまりエモ消費するのも……と思ってはいるものの、本当に今日もちゃんと幕が開くのだろうか? と思いながら梅田に通っていたので、OPの♪Be revivedで毎度泣きそうになっていたし、咲奈ちゃんはとってもかっこいいトップさんだなあというのを日々感じる公演期間だった。好きな場面をひとつに絞るならやっぱりNYかなあ。
宝塚歌劇団雪組「心中・恋の大和路」@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/koinoyamatoji/index.html
わたし、2014年の壮・愛加コンビの大和路が大好きなんです。はじめて映像で観たときに、こんなに芝居も演出も曲も完璧な演目があるのか!と衝撃を受けて、以来宝塚の演目でも5本指に入るくらい好き。そんな大好きな演目を生で観れるなんて……と思って観に行ったのだけど、驚くほどしっくりこなくて、まあひとことで言うと「解釈違い」だったってことです。あのふたりにはもっと違う、ちゃんとふたりに合う演目を当ててあげてほしかったっていうのが本音。
雪組でしっかりしたお芝居が観たいなあと思っていたタイミングだったので、別箱とはいえ大好きな和物でそれが叶ったのはうれしかった。雪組にはお芝居のうまい下級生たちがたくさんいるなあ。
8月
NCT127「NCTzen127-JAPAN Meeting 2022 'School127'」@さいたまスーパーアリーナ
宝塚歌劇団雪組「ODYSSEY - The Age of Discovery-」@梅田芸術劇場メインホール
SMTOWN LIVE2022「SMCU EXPRESS@TOKYO」@東京ドーム
9月
宝塚歌劇団宙組「HiGH & LOW -THE PREQUEL-/Capricciosa!!」@宝塚大劇場
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/highandlow/index.html
ハイローを地味にドラマシリーズから追ってきた古参なんですが(古参マウント)、2022年はNCT127の悠太がザワクロに出演したかと思えば宙組で前日譚が上演されることになったり、自分の好きなものすべてがハイローになる謎の年でした。スピンオフであるザワも好きだけど、やっぱり本編のファンだから久しぶりに本編のタイムラインを感じられるというのがなによりうれしかった。発表時は真風さんがやるなら雨宮尊龍だろ!『THE RED RAIN』しかないだろ!とか思ったりしたけど。
ただ、ショー作家としての野口先生は好きだけど劇作家としての野口先生は評価していないので、おそらくヅカオタでない人がたくさん観にくるだろう前日譚の出来をずっと心配してたんですが……結果的にすごいハイローで……脚本としての出来は全っっっっ然良くないんだけど(ここは主張していこう)、でもこれすごいハイローだ……ってなって、ハイローとしては満足度がめちゃくちゃ高かったしずっと肩震わせて笑っちゃったし。SWORDが全部燃えたとこで耐えきれなくなったし。これが果たして「正解」なのかはわからないけど、少なくとも普段笑顔のないわたしが笑顔になった現場ではあった。でも、野口先生と宝塚大橋とかでばったり出会ったら、良かったけど、本当に良くないと思うよ。って説教系おたくになってしまうと思う。
『カプリチョーザ』は前作の『グランカンタンテ』に比べたらだいぶ持ち直した感じがある。藤井先生のショーで好きなのが『アクアヴィーテ』だから、藤井先生と宙組の相性がいいのかも。
秀山祭九月大歌舞伎 第二部「松浦の太鼓/揚羽蝶繍姿」@歌舞伎座
初歌舞伎座。コロナ禍でなくなっていた一幕見席が再開したら行こう!と思ってたけどなかなか復活しなさそうだったのでもうええわいと3等席をとりました。3等席は普通に遠いし、演者によっては何を言ってるか本当に聞き取れない!歌舞伎独特の台詞回しがあるからそもそもそれを初見で全部聞き取って……というのに無理があると思って、普段の演劇の鑑賞方法とは違う楽しみ方をすることにした。そもそも通しの作品の一場面だけ切り取って上演したりするわけだから、舞台だけ観てストーリーとして楽しむ想定でもないような……。
《松浦の太鼓》はまだ見方が定まってないのもあって正直ちょっと眠たかったけど、《揚羽蝶繍姿》はいろんな名場面を少しずつやっていて(追善公演ということで、当たり役のオムニバスみたいな感じ)面白く観れた。ラストのすごく短い場面を観て、幸四郎っていいな〜と思った。歌昇のことも気になる。
歌舞伎の観客は自分の好きなところで拍手するから拍手しなきゃダメかな……?ってなる瞬間がなくて気が楽。
落語も聞きに行ってみたい〜と思ってはいたもののなかなか足を運ぶまでに至らず、ドラマ『タイガー&ドラゴン』を全話見てからようやく末廣亭に。クドカンのホンは面白いけど、過去の作品のホモソーシャルがかなりドギツい。ここから『監獄のお姫さま』にまで至ったことにちょっと感動できるほど。
というわけで初寄席だったわけだけど、(当たり前だけど)落語に関しても芝居のうまさと声の良さが大事なんだなと思った。桂三四郎っていう新作落語をやっていた人が芝居がうまくて聞きやすくてよかった。最前にいたちっちゃい女の子がファンだったっぽくてあの年から落語ファンって相当頭よくない?って思いました。
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/greatgatsby/index.html
めちゃくちゃよかった……。久しぶりに宝塚の芝居に素直に「いい!!!」と思えたのもうれしかった。月城さんのお芝居が好き。原作を読んでたらまた捉え方も違ったかもしれないけど、芝居の終わり方が好きだったからもうフィナーレいらないのでは、とすら思う一本ものに出会えるとは……。わたしは人間のあわれさが描かれてる芝居に弱いのだ。
『グレート・ギャツビー』に出てくるキャラクターの中で、実際に存在したら好きになれるような人はほとんどいないけど、ことお芝居においては人間のそういうところを見せられるとまとめて愛しくなってしまう。というか普段の生活ではあんまり人に見せない部分を見られるのがお芝居を観る醍醐味でもあるじゃん。
それこそ、トムなんて本当にいいところがない。自分があらゆる人を踏んでることに気づいてないというか、気づいててもそれの何が悪いんだって思ってそうなところがひしひし出ていてすごかった。序盤のトムの貴族の歌が最悪で拍手したくない。ちなつさんたちは悪くないんです。
神の眼の演出はすごく小池先生だな……と思いました。よみがえるロミジュリの記憶。るうさんのお芝居はとってもよかったです。
10月
https://kageki.hankyu.co.jp/revue/2022/soukyunosubaru/index.html
原田先生の脚本もいまいち信用できないところがあるので、原田先生の一本ものと聞いてまずうーん……と思ったのだけど、とにかく原作が面白くて。でも、原作が面白ければ面白いほどこれどうやってやるのかな、ちゃんとやれるのかな、となり、ラストのあれがないと文秀の傲慢さや改革が失敗した理由に結びつかないけどあれをやるのは無理ではとかやらせてほしくない、とかいろいろ考えたり、上演前から勝手に悩みまくっていた。
実際に上演された作品を観て、場面場面の演出はすごくいいし衣装や美術の豪奢さもとてもいい、だけど肝心の脚本がやっぱり良くなくて、原作があってここまで書けないってなるともうBWものの演出とショーをやるしかないのでは……と思った。
メディアミックスの作品を評価するときはいつも言っている気がするけれど、別に「原作をそっくりそのままやれ」なんて思わないしやる必要はないけれど、作品のテーマからはブレたらだめだと思う。春児が中心だけど群像劇として描かれている作品を文秀中心に組み替える時点でブレを心配してたけど、本来他のキャラクターが負うべき役割を文秀に負わせたり、文秀こそ英雄だという台詞を加えたり、文秀(たち)の傲慢さを断罪することなくあまつさえヒロイックに仕立てるのって、作品のテーマとして逆を行ってないか、という。文秀のために大幅に改変された譚嗣同 ……。
日本軍に対する批判なしに日清戦争の場面で旭日旗を出すのも、ただ演出としていい画だからって理由でやってない?と疑う心が生まれてしまう。一応おどろおどろしさも感じるから、さすがにただ「かっこいい群舞」として挿入されたわけではないと信じたいんだけど。
いろいろもやもやしてしまって、記者や淮軍をやってる風雅くんがずっと面白いのとか、それくらいでしか笑顔になれない。ただ男役群舞は本当に最高。かちゃさんとあすくんとすわっちがかなーーりいいです。デュエダンの方はいまだに消化できてないんだけど、男役群舞もデュエダンも同じ羽山先生だから愛すべきなのか憎むべきなのかわからない……って言いながら観てる。
芸術祭十月大歌舞伎 第一部「鬼揃紅葉狩/荒川十太夫」@歌舞伎座
11月12月は事情により大歌舞伎を観れないのだけど、こうして月イチくらいのペースでゆるっと観ていきたい。かといって知識があるわけでもないので、なんとなくの選択で第1部のチケットをとったら、《荒川十太夫》はなんと『メサイア』シリーズの西森さんの歌舞伎演出デビューだったという運命。こんな日が来ると思わなかった──ってメサイア有給乃刻(誤字ではない)になった。
《荒川十太夫》はもともと講談でやってたものを歌舞伎化したらしく、新作だからなのかいわゆる歌舞伎のあの独特の台詞回しではないしちゃんとこの幕の中でストーリーが完結するので「演劇」として観た。
《鬼揃紅葉狩》は鬼たちの毛振りがバンギャのヘドバンみたいで面白くなったり、猿之助がめっちゃかっこよくて夢中になったりしました。床を鳴らしながら踊るところがめちゃくちゃかっこいい……。名の知れている歌舞伎役者って本職で観ると確かにかっこいいんだなあということをしみじみ感じている。
『エリザベート』上演と同時期にこの作品をやっていることに数奇なめぐり合わせを感じた。序盤こそ登場人物の多さや描かれる関係性の複雑さについていけるかを心配していたのだけど、話が進むにつれ、いつのまにか心配を忘れるほど作品に没入していた。人間関係が複雑な分、演劇の構造としてはすごく単純にできている。歴史的背景をしっかりわかってるともっとわかるんだろうな、という歯痒さもあったけれど、自分のようなざっくりとした理解でもちゃんと観られるようにできているのはさすが。
衣装も素敵だった。担当は前田文子さん。盆がぐるぐる回るとそれだけで嬉しくなってしまう性なので、場転のためだけじゃなく何周か回るところもあって好きな盆の使い方だった。2階からの視点だから定かではないけれど、客席と舞台の段差がないように見えるし舞台がめちゃくちゃ広く感じるな、と思ったら客席を9列目まで(!)潰していたらしい。広々とスペースをとった盆の上に調度品と数本の柱、という基本のセットは変わらないけれど、ちょっとした変化で一族の経済状況がちゃんとわかる。時代が移り変わるときに柱に○○年って映し出されてたかな……。美術は文学座の乗峯さん。
あまりキャストのことを頭に入れずに行った(「新国立の演劇」という理由で観に行っているので)かつB席オペラなしで観ていたので、ヤーコプ役鈴木勝大じゃんってカテコのときにようやく思い至った。遅い。カテコでリトルヤーコプの手を引いてはけていくかつひろ……。さらにパンフを読んで、ナータンが劇団Patchの田中亨くんであることに気づく。元気そうでなにより。
めちゃくちゃデメルのケーキが食べたくなったのでわざわざ買いに行きました。甘すぎ。
11月
12月
今年の現場納めが12月30日でギリギリまで営業しているので、12月分は別途エントリを書こうと思います。本当に書くのか?
ミュージカル「東京ラブストーリー」@東京建物Brilliaホール
劇団柿喰う客「禁猟区」@本多劇場
Thanks Musical Concert「A Gift For You」@日生劇場
木村達成 10周年コンサート -Alphabet Knee Attack-@ヒューリックホール
Outro
2022年は演目数でいうとざっと30くらいしか観ていないのだけど、それはもう完全に宝塚にリソースを割かれていたからに他ならない。観たいものはたくさんあったけれど泣く泣く諦める、ということの多い1年だった。どうしたって懐は有限なので、なにかをたくさん観ようと思うとその分なにかを諦めなければならないんですよ。という当たり前すぎることをひしひしと感じる羽目になるとは……。
もうひとつ気づいたことは、短期間に同じ演目を一定回数以上観ると人はおかしくなってしまうということです。ものすごーーーく面白くて自分好みの演目であればまた違ってくるかもしれないけれど、自分がそんなに面白いと思えない/好きではない演目の場合、「どこがどんな風に好きではないか」の言語化は尋常じゃなく捗って、その反復によってより一層演目を嫌いになるという悪循環に陥るのです……。無駄に人生の意味とか考えちゃったりして。自分がどんな表現がどんな風に許せないのかの理解が深まったからこの時間も無駄ではなかったのかも、とか。安くないチケット代を払っておいてそんなことを考えるのは嫌すぎるだろ。
と、少しおかしくなってきたところに大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を一気見して、なんて面白いんだ!!!!!! と感動して鎌倉に行ったり伊豆に行ったりしてすっかり正気を取り戻したので、2023年は気の向くままにいろんなものを観に行こうかな〜と思っています。