夢と現実いったりきたり

舞台「ラビット・ホール」

@PARCO劇場

 

STORY

4歳のひとり息子を亡くした若い夫婦ベッカとハウイー。息子は、飼い犬を追いかけて飛び出し、交通事故にあった。ふたりの悲しみへの向き合い方は真逆で、お互いの心の溝は広がるばかり。妻ベッカは、彼女を慰めようとする妹や母親の言動にもイラつき、深く傷ついていく。ある日、事故の車を運転していた高校生ジェイソンから会いたいと手紙が届く。それを読んだベッカは・・・・
 
悲しみの底から、人はどうやって希望の光を手繰り寄せるのか。人間の希望の本質とは何か。「ラビット・ホール」は、わたしたちの身の回りのありふれた風景や会話から、確かな希望の光を鮮やかに紡ぎ出します。

 

感想

 どうでもいい話だけど、なぜか劇場に辿り着くまでに変に迷ってしまった。渋谷は鬼門。

 戯曲も芝居も演出もクオリティは高い……と思うんだけど、前提としてあまり得意な話ではなかったのではまれなかった。個人の問題として家族のことがわからなさすぎる。が、台詞に「翻訳劇っぽさ」がなくシームレスに入ってくる感じがあり、インタビューで語られていたとおりそのあたりをかなり丁寧に作り上げたんだろうなというのはわかった。個人的には演劇を観るときは必ずしも「リアルな」会話を求めておらず、日常会話では絶対に使わないような「台詞」を求める場合もあるのだけど、この内容だと「リアルな」会話を選択するほうが理にかなっていると思った。

 そもそもの話、PARCO劇場でかかる芝居というのが志向として自分にあんまり馴染まないのかも、と思った。勝手な印象だけど「丁寧な暮らし」感というか、言葉は悪いけどスノッブ感が漂っている気がして……なんか変に綺麗な印象があってそれがほんのり鼻につくっていう。自分の好みとして、もうちょっとざらついた質感のものを求めてるんだと思う。これを書くにあたって公式サイトを見ていたら、煽り文句に「すべての人に響く物語」とあって、すごいこと言うじゃん? と思ったし、そういうとこが苦手なのかもとも思った。

 ベッカが公開講座のようなところで文学の講座を受けていて、「暇な専業主婦たち」がそこでは家庭の話なんて一切せず、ただのひとりの人間として文学の話だけするのが楽しい、と言っているところは好きだった。人間が家庭や社会における役割から降りてただの個人になる場は絶対必要なので。

 あとはシンプルに「『夫』の成河だ……」と思いました。雑念。ハウイーのことは全然好きじゃないです。