夢と現実いったりきたり

ミュージカル『生きる』市村正親ver.

 

STORY

役所の市民課の課長・渡辺勘治(市村正親)は、早くに妻を亡くし、息子の光男(市原隼人)とその妻・一枝(唯月ふうか)と同居して生活していた。そんなある日、渡辺は自身に胃がんが見つかり、余命半年であることを知る。自らの人生を振り返り、意味あることを何一つ成し遂げていないことに気が付いた渡辺は、現実逃避するため大金を手に夜の街へと繰り出す。居酒屋で出会った売れない小説家(小西遼生)から誘われ、2人は盛り場をはしごするが、渡辺の心は晴れずむなしさが募るだけだった。
翌日、役所の同僚である小田切とよ(May’n)が渡辺のもとを訪ねてくる。渡辺はとよの明るさ、生命力に惹かれ、自分の人生になかったものを見いだす。そしてついに、渡辺は市民が求めていた公園の建設を成し遂げようと思い立つ。

 

感想

小説家役の小西くんが見れればいいか、とそこまで期待せずに見たら存外いいミュージカルでした。タイトルやあらすじでしんみりした感じなのかな……という先入観があって、あんまり食指動かないな〜とか言っててすみません。

 

描かれるテーマについては真新しいものではない(そもそも原作が70年くらい前の作品だから当たり前なんですが)けれど、それを彩る楽曲群がすごくいいです。生きていく希望を見つける、という全体のテーマに合わせているのか、前向きな印象を受ける曲が多くて、聴いてて気持ちがいい。

 

ミュージカルってその他に多少粗があったとしても「これさえ聴けたらもう満足できる」って思えるナンバーがあると強い=リピートしたくなる作品だな、と個人的に思っています*1。渡辺が公園をつくることを決意するソロ(曲目がわからないけどCDのクレジット見る限り〈2度目の誕生日〉かな?)はそれにあたるナンバー。曲もいいし、なにより市村正親がうまい。技術面はもちろんのこと、感情の乗せ方がとにかくすごすぎる。ミュージカルで見るのは初めてだったけど、彼がこれだけ長く愛されてる理由がわかる。完全に劇場で見たいやつです。うさぎもかわいいし……

 

小西くん演じる小説家は最初こそ狂言回しの役回りを担ってて渡辺をガイドしてるけど、途中からは逆に(それこそ「人生の主人にな」った)渡辺に突き動かされて巻き込まれる立場になっていくんですよね。たぶん渡辺の息子・光男と同じくらいの年齢設定なのかな? なんとなく光男に対して敵対心を持ってそうなさまがちょっとかわいい。真面目に生きてきて正攻法しか知らない渡辺を、正攻法じゃどうにもならない世の中を知ってるからこそ裏で手を回して、でもそれを渡辺には言わない小説家〜〜! 渡辺との出会いが小説家の生き方も変えてしまったのかもしれないと思うとドキドキします。これぞボーイ・ミーツ・ボーイの醍醐味……(どちらもボーイではないですが)

 

ミュージカルおたくの中でやたら好感度の高い印象のある唯月ふうかちゃんは出番こそ少ないんですがそのちょこっとの出番でもめちゃくちゃかわいくて、うっかり好きになってしまいました。恋……?濃ゆいピンクの衣装がかわいくてかわいくて……VSホリプロ戦、常に負けています。

 

日本オリジナルミュージカルを作ろうと頑張っている印象が強いホリプロ、『生きる』を見たらうまくいってほしいな〜という気持ちがより一層強くなりました。海外ミュージカルはもちろん好きですけど、やっぱりオリジナルキャストになれる機会の有無って大きいだろうし。観客としては文化的背景をインストールしなくても直感で「わかる」ミュージカルがあるともっと楽しいのかな〜と思うし。今ちょうどミュージカルクリエイタープロジェクトの募集中なので、今後の動向もちょっと気にしてます。

 

10月の再演、市原隼人*2の役柄を村井くんが演じるのが気になっているので見にいくかも。村井くんが演じるの、わかるけどわからない……そう思わせる村井くんは不思議な役者です。昨今の状況を鑑みるとどうなるのかというところではありますが、無事開催されることを祈って。

 

 

*1:エリザベートは〈私だけに〉〈最後のダンス〉で2曲あるからその点めっちゃ強い

*2:市原隼人は今も昔もかわいいと思います