ミュージカル『フランケンシュタイン』を観てきました。柿澤・小西ペアです。他ペアも観たくなってチケットを増やしたので、舞台の感想はもう少しろくろを回してから書くつもりなのですが、今日はとりあえず「君の夢の中で」について、他愛もない感想を書き留めさせてください。
「君の夢の中で(原題:너의 꿈 속에서)」はビクター・フランケンシュタインの研究を手伝う彼の“親友”、アンリ・デュプレが1幕のクライマックスで歌い上げる曲です。この曲の美しいこと!「とあるきっかけで人を殺めてしまったビクターの罪を被って斬首刑を言い渡されたアンリが、面会に来たビクターに自分の胸のうちを打ち明けるところからはじまり、最後はギロチンで首を切られて終わる」という、状況だけ見ると酷なシーンのはず……なのですが、最初から最後まで悲惨な音は鳴らないのです。静かに、でも奥底から湧き上がるような、よろこびに溢れている。そんな印象を受けました。
歌詞も実質アンリからビクターへの告白ソングと言っても過言ではない内容に仕上がっていますが、アンリにとってのビクターは「新たな人生を与えてくれたひと」(物理的にも精神的にも)であり、つまりは神さまみたいなものだったのだと思うのです。フランケン的に言うと「創造主」。恋と信仰は相似と言いますが、アンリの場合は信仰の色が強いように思います。「そんな晴れやかに斬首台までの階段をのぼるやつがあるか!!!」と思わず背筋が凍るほど晴れやかに歌い上げてるけど、お前の目にはグズグズになってるビクターが見えてないのか……。
フランケンの中で、どころか、ミュージカルナンバーの中でも屈指の名曲なんじゃないでしょうか。観劇後、取り憑かれたように韓国版のOSTを聴いています。ところでこのOSTには「君の夢の中で」が2種類収録されているのですが、ボーナストラックのハン・チサンver.が本当に素晴らしいです。
▲OST収録「君の夢の中で」
▲「君の夢の中で」MV
感情の乗せ方がすごくうまくて、視覚情報がなくてもありありとアンリの心情が伝わってくるような歌声。ミュージカルってこれだよなあということをしみじみと感じさせられました。
歌声だけで感銘を受けた経験は以前にもあって、それはラジオ番組「今日は一日ミュージカル三昧」で『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』の「Wig in a box」を歌った柿澤さんに対してでした。WIABを聴いてから、柿澤さんのお芝居を観たいな、と思って(いたもののあらゆるタイミングを逃し続けここまで来てしまったわけですが)今回フランケンを観るに至ったわけで、柿澤さんきっかけでまた美しい曲に出会えたことが、なんらかの巡り合わせだったのだろう、ということにしておきます。
▲「Wig in a box」原曲
そういえば先日、「Sound Inn "S"」で田代万里生さんがこんなことを仰っていました。
「奇跡のワンテイク」、劇場中の集中力が一点に集まる瞬間、演者と客席が相互に影響しあって生じるこれ以上ない瞬間がある。それを求めてお客さんは劇場に足を運ぶし、演者側も稽古をつむ、という話は体感としてめちゃくちゃわかる。舞台上と客席は共犯関係にあるって言うけどそういうことだよなあ
— ねむ (@____sugarhigh) 2020年1月20日
「君の夢の中で」のラスト、"君の夢で(너의 꿈에)"と"生きよう(살고 싶어)"の間に訪れる静寂の一瞬に、わたしは近いものを感じたのだと思います。