夢と現実いったりきたり

OFFICE SHIKA REBORN パレード旅団を観ました

 

12月24日(日)13:00@ABCホール

 

shika564.com

 

この戯曲は二つの世界を移動する。

ひとつはいじめにさらされている、中学生の世界。

もうひとつは、崩壊にさらされている、ある家族の世界。

全国から集まった「いじめられっ子」たちには、夢があった。

何不自由の無い「普通の家族」は、ばらばらに抱えた孤独があった。

世界を変えるために少年は言う。

「復讐、しませんか?」

世界を変えるために父は言う。

「今日かぎり、父さんは父さんをやめようと思う。」

ふたつの旅が、始まる。

 

 

 OFFICE SHIKA REBORN、パレード旅団を観に行ってきました。過去の名作戯曲を上演するプロジェクトの第一弾、ということで、これからも続いていくようです。「パレード旅団」は私が生まれるもっと以前に書かれているので、当然観たことのない戯曲ですが、テニミュに出演されていた佐藤祐吾くんもいるし、ヤング券でお安く観れるし、題材も面白そうかな~~というわけでチケットを取りました。これだけは言わせてもらっていいですか? 鹿殺し……チケット購入がめっちゃ楽!!! わざわざコンビニ行く手間もいらないし、発券忘れもなくなるし。楽に買えるのは良いことです。プレイガイドが間に入ってる公演の方が多いし、この形が一気に普及するのは難しいかな~~とは思いますが。

 

 さて、「二つの世界を移動する」とあるように、この作品は「いじめられっ子たち」の話と「家族」の話を移動しながら進行していきます。それまで「父親」を演じていた役者が、激しい嵐の音がした後は「いじめられっ子」を演じている。次の暗転ではまた「父親」に戻っている……そんな風にぱたぱたと世界が切り替わる。どんどんその切り替わりの頻度が高くなっていき、全く別の状況にある二つの世界がラストにはリンクしあう、というつくりは面白かった。

 

 内容については、違和感や疑問を抱く部分もあった。「家族」の方は、形骸化してしまった家族が、一度自分たちの役割を交換し、自分たちが演じてきた役割について見つめ直すことで、最終的には「家族」を再構築して……みたいなことになると思う。その肝心な「家族」や「役割」の像が、現代のリアルとはズレて感じた。作中で描かれるのは祖父・祖母・父・母・息子・娘・ペットという所謂サザエさん世帯。父は外で仕事をして皆を支え、母は家で料理を作って皆を待つ。娘が男と出歩いたり、煙草を吸ったりすると世間から白い眼で見られる。そういうの古くない?ってなってしまった。もしかしたら根っこの部分は今も変わらないのかもしれないけれど。

 

 「いじめられっ子」の世界は、とにかく宮内くんに対してイライラしてしまった。私自身いじめられた経験がないからかもしれないけど、毒殺を実行してしまう独りよがりさが、全然わからなくて。「やらなきゃこっちがやられる」っていう切実さはわかるんだけど。大森さんと北村くんの言う「自分よりも劣っている人がいる学校へいけばいじめられない」もあまりにも利己的だし、松本くんの言う「いじめられっ子だけを集めた学校をつくれば、皆いじめられる痛みを知ってるから誰もいじめられない」はあまりに夢物語すぎる。皆を集めた坂口くんは本当にただ同じようにいじめられてる子たちと集まって遊びたかっただけなのに、殺人事件に巻き込まれてしまって災難だな、って割とずっと思ってしまってた。皆このままでいいなんて思っているわけがないけど、じゃあどうすればいいんだ? 大人は戦えっていうけど、じゃあ具体的にはどうすればいいんだ? って考えた結果なんだろうけど……なんだかなあ、学校以外にコミュニティを持つのが一番いい方法なんじゃないかな、みたいなことを考えていて、ああこれは「いじめられっ子たち」に無責任な解決法を提示していた家庭教師の女と一緒だなと気が付いた。でも、だからって宮内くんに対する気持ちは変わったわけではなくて、何なんだよお前、って思ってる。もやっと。

 

 最後彼らは疑似家族を形成して、それが「家族」の話の役割とぴったり同じになる。私は個人的に疑似家族というものに全く惹かれなくって、というか「家族=美しいもの」、みたいな、そういう幻想に不信感をどうしても抱いてしまう人間だから、「ああそういう風に落とすんだ」って、それ以上でも以下でもない感想を持った。でも、家族の中の自分の役割に縛られてそれを演じるようになっていた「家族」と、それぞれの性質から役割分担して疑似家族を形成した「いじめられっ子」、という対比は面白かった。

 

 余談ですが、松浦さんのヘッドスピンと橘さんのフライングと最初の曲(「メロンのうた」)のナンバガオマージュ*1にはめちゃくちゃウケた。橘さんは役柄上もあるけど客席に一番ウケてたと思う。好き。あと橘さん以外全員セーラー服を着て歌って踊る「スカートめくりのうた」、祐吾くんと松浦さんのかわいさは「かわいい~~」って見てられたけど、蕨野さんのセーラー服姿は「きれいなお姉さま」って感じで、背徳感というか見ていてドキドキ感がすごかったです。おきれいです。

 

 なんだろう、構造的に面白いなと思う作品だったけど、自分とは背景にあるものが違いすぎてしこりが残る作品でした。とはいえOFFICE SHIKA REBORN自体にはめちゃくちゃ興味があるので、次があればまた観に行きたいなあと思います。チケット購入も楽だからね!!!(強調)

 

 

 

 

 

*1:途中完全に「鉄風 鋭くなって」だった