夢と現実いったりきたり

なぜ木村伝兵衛を愛しく思ってしまうんだろう:改竄『熱海殺人事件』ザ・ロンゲストスプリング

3/19(木)ソワレ@紀伊國屋ホール

熱海殺人事件」の決定版として有名な「ザ・ロンゲストスプリング」で、木村伝兵衛部長刑事を演じるのは、つか作品では、2016年に「新・幕末純情伝」で勝海舟を好演するなど、実力派として数々の舞台に出演し、近年ではドラマ・映画での目覚ましい活躍も記憶に新しい、期待の俳優、荒井敦史。捨て身の潜入捜査を行う水野朋子婦人警官には、2014年『仮面ライダードライブ』の敵幹部役メディック役でテレビドラマ初出演を果たし、魅力的な女優として活躍中の馬場ふみか。容疑者大山金太郎は、舞台『弱虫ペダル』や舞台『刀剣乱舞』などの話題の舞台で活躍目覚ましい玉城裕規が務める。富山から来た田舎の刑事熊田留吉には、ミュージカル『刀剣乱舞』で人気を博し、テレビドラマで活躍を続ける佐伯大地が挑む。

 

感想

 観たことないんです、『熱海殺人事件』どころかつか作品自体。だからどこが「改竄」されているかもわからないんです。ただ、中屋敷さんはつかこうへいが好きなんだな、ということはよくわかりました。

 

 全体的にコンプラとかポリコレとかは機能していない(特に主人公・木村伝兵衛の言い草がひどい)わりにはそこまで引っかかりを感じずに観られたかなと思う。描かれてる時代背景が違うから……というのはあるかもしれないけれど、同じパターンでも引っかかってしまって素直に楽しめないこともあるからなんでだろう?と不思議だったのですが、「木村伝兵衛が愛しくてたまらないからでは」という結論に達しました。

 

 木村伝兵衛はそれはもう鼻持ちならない物言いをする男ですよ。しかもしょうもない男ですよ。なのになぜ彼にこんなに惹かれてしまうのかって、トイレをきちんと掃除してしまうような男で、そしてさびしい男だから。水野が語る安宿でのエピソードが本当にいい。トイレ掃除をする姿を見て「この人と一緒にいたい」と思うのめちゃくちゃわかるよね……なんだこいつ……恥ずかしい……むり……って思っててもそんな姿見たらあーもう仕方ないなってなりませんか。なります。

 

 みんなが去ったあともひとり捜査室に残された伝兵衛は、(まるで自ら捜査室に残ったのだとでもいうように)不敵に煙草を燻らせるわけだけれど、水野や熊田にそばにいて欲しい気持ちは確実にあったと思うのです。それを結局口にせずむしろ背中を押すというのが、彼の(自分と"ここ"にいるよりも彼らのためになるという)優しさ由来なのか、はたまた(それを口に出すことが"木村伝兵衛"に相応しくないという)弱さ由来なのか。ひとりで煙草の煙を吐く姿を見ながらも、冒頭に語られた「この若さがいつか自らを追い込む」という昏い暗示を反芻していました。

 

 もはや木村伝兵衛という男の心に触れられただけで価値がある〜完〜と言い切ってもいいくらい伝兵衛にメロメロになっていることが彼の思想や発言をある程度受け流せた一因だとは思うけれど、加えて、彼の思想や発言に対しては基本作中で突っ込みが入ってくるというのも大きいと思います。熊田や大山からは終始「なんだこいつやばいな」という目で見られてるし。わたしはむしろ、そんな熊田や大山に引っかかってしまった……特に大山については(基本はかわいいと思うんですよ、なんてったって玉ちゃんだし)アイちゃんに投げかける言葉や態度が、端的に言って無理でした。

 

 「1000円を差しだす」というのが一番アウトな行為ではあるけれど、そもそも彼が拠り所にしている地縁とか同郷とかそういうコミュニティ的なものにわたしが必要以上にアレルギーがあるというか、別にトラウマがあるわけでもなんでもないけど帰属意識というものをとにかく持たないようにして生きている地方出身者としては、大山の言動すべてが「見ててしんどいもの」だなと。村相撲で優勝した話とかさ、お前いつの話してんだよ、それしかないのかよって思ってしまうんですよどうしても。実際彼にとってそこがピークでキラキラしてた時期で、そこに縋ってないとしんどかったんだろうというのはわかるけど、生きてるのはいまなんだから過去ばっかり見ててもしょうがないじゃん。現在進行形でどん詰まりでも、ここから絶対上にいってやるって意地を見せられるアイちゃんは馬鹿みたいかもしれないけど好きになれるんですよ。

 

 とはいえアイちゃんはわたしよりももう少し優しい気持ちを持っている人だと思ってて。彼女は彼女で疲れ切っていて、だけどきっかけがないと帰ることもできなくて、大山をそのきっかけに、あるいは利用しようお思っていたのかもしれない。そういう強かさが好き。だからこそ、どれだけ彼が変な格好をして恥ずかしい行動をとっていても最後まで諦めずに話をしていたんじゃないか。となるとますます大山のあの行動はあまりにも最悪としか言えなくなってくる。そのへんは伝兵衛がきっちり正論パンチをかましてくれるから浮かばれるんだけど……木村伝兵衛のそういうところが信頼できると思いませんか???

 

 結局行きつくところそこかいって感じですけど。これが元のつかこうへいの戯曲の力なのか、中屋敷さんによる改竄と演出の力なのかわからないのが歯痒い。ある登場人物のことをとんでもなく愛おしくなるのが(あくまでわたしが観た)柿の芝居だし、やっぱ中屋敷さんについていくしかないのかも。そしてもちろん役者本人の魅力と実力あってこそだと思うから、

 

スペシャルサンクス:荒井敦史!!!

 

 

NCT127『NCT#127 NEO ZONE』活動アーカイブ

 NCTを好きになってからはじめてのカムバである正規2集『NCT#127 NEO ZONE』の活動を(インターネット上で)やんわり追っているうちにどれがどの日のどの局の何だったのかがこんがらがってきたので、ここらでパフォーマンスの動画をアーカイブしておこうと思います。供給の多さがK-POPのいいところでもあり悪い(というわけではないけど疲れる)ところでもあるなあと思う今日この頃です。

 

THE STAGE

Kick It

SQUAD&FIGHTER ver.

SQUAD ver.
  • 編集版

  • center cam

  • one take

 

FIGHTER ver.
  • 編集版

  • center cam

  • one take

 

 「THE STAGEとは?」という謎は解決されていませんが、このステージはSJシンドンのプロデュースなのだとか。

 ちなみにインタビュー等の本編はこちら。まだ全編見れてないけど、テヨンの顔をかっこよすぎて直視できないジョンウに「俺のことは気楽に見るよね?」って絡むドヨンくんのことがやっぱり好きだなと思いました。

 

SBS 人気歌謡

0308

Kick It
  • 編集版

  • Director's cut

  • Full cam

  • High angle cam

 

 この日のインガの〈序曲〉大好き。とにかくインガがジェヒョンの顔の持つ力を信頼していることがよくわかる。悠太くんめちゃくちゃヤンキーだなと思ってたら、この衣装やスタイリングは映画『クローズZERO』を意識してつくられたのだとか*1。クロゼロってすごいんですね、冒頭5分くらいしか見たことないんですけど……そろそろちゃんと見ます。

 

0315

Kick It
  • 編集版

  • Full cam

  • High angel cam

  • Side cam

  • one take

 やたらといろんな映像を出してくれている日。

 

0319

White Night

 (インガじゃなくてラジオですが)急にノリだしてマークから「え……何……」って視線を向けられるテヨンが見どころ。

 

0322

Kick It
  • 編集版

  • Full cam

  • one take

  • high angle cam

 地べたに寝転がってジョンウ・ドヨン・ヘチャンに運ばれるテヨンが見られるhigh angle camをおすすめします。

 

0329

Kick It
  • 編集版

  • Full Cam

 この日の悠太チッケムがやばい大賞2020という感じなので見てください。大型ネコ科動物……

 

KBS Music Bank

0306

Kick It
  • 編集版

  • K-Choreo

 0308のインガと同じ学ラン。

 

0313

Kick It
  • 編集版

  • K-Choreo

 

0320

Kick It
  • 編集版

  • K-Choreo

 ビジュアルの仕上り具合。個人的にヘチャンに襟足は必要だと思います。ところでストーリーにあげてたジェヒョンの襟足はどこで公開されるんですか???(見落としてたら教えてほしい)

 

White Night
  • 編集版

  • K-Choreo

 TV初披露の白夜。テ、テヨン……!前髪のあるテヨン……!

 

0327

Kick It
  • 編集版

  • K-Choreo

 

First Win Encore
  • 全体

  • Vertical ver.

 1位本当におめでとう!!!

 

MBC Show! Music Core

0307

Kick It
  • 編集版

  • Full cam

0314

Kick It
  • 編集版

  • Full cam

 

0321

  • 編集版

  • Full cam

 

0328

  • Full cam

 

 MBCのアカウントからだと編集版*2VPN変えても見れないんですよね。NAVER TVから見ろってことなのかな……と思いつつ、(いるかはわからないけど)NAVER TVとかよくわからないけど突然イリチルにハマりました!ってひと向けにYouTubeで見られるKOCOWAのリンクを貼っておきます。

 

Weekly Idol

Kick It

 

Dance Practice

 結局ダンスプラクティス大好きだよね!

 

 

*1:SHUIT(슈트) KBS2 뮤직뱅크 아이돌 'NCT127' CUSTOM SUIT : 네이버 블로그

*2:ってずっと書いてるけど放送版の方が正しいのかな

2020年1月2月のまとめ

 2020年はじまったばかりなのにもう2ヶ月も経ってしまったのね……ということで見たものまとめです。

 

1月

舞台/現場

 1月にして今年のナンバーワン感情に出会ってしまった感。大楽で加藤和樹さんが三演への意欲を見せていたそうで、気力体力ともに消耗する演目だと思うしカテコ時点ではやりきった……もうこりごり……ってなっててもおかしくないのにどんな精神力だよと思った。三演が実現したとしてもキャス変あると思ってるけどどうだろう。

 

 武蔵野の追加公演も行く予定だったけど残念ながら中止になってしまったドリショ。ドリムとドリムの子たちははここからどうなっていくのでしょう。

 

映画

  • パラサイト 半地下の家族

 超面白くて、パラサイトのために初めてオスカーの生中継見てわいわい(ひとりで)してた。妹役の子がめちゃくちゃドラマ『シンデレラと4人の騎士』のヒロインに似てるなと思ったら本人でした。シンデレラ本当に面白いからみんな見て。アンジェヒョンいろいろアレな離婚したけど。

 

2月

舞台/現場

  • 学芸会レーベル
  • アセリ教育

 熱海と夜盲症も観に行きます!!!

 

  • NTL リーマン・トリロジー

 アンコール上映やってるそうなのでお時間ある方はぜひ(シネリーブル池袋は終映日程未定だそうです)

 

 コロナの影響で中止になってしまって切ない……松岡広大かわいすぎ問題に向き合ってる最中です。かわいいよ〜〜

 

  • ゲキ×シネ『髑髏城の七人 Season花』

 わかんないけど花は正史っぽい。やっぱり山本耕史の蘭兵衛はずるくないですか。

 

  • ゲキ×シネ『髑髏城の七人 Season月 上弦の月

 下弦とまとめてちゃんと感想を書きたい……と思っては……います……!個人的には上弦がめちゃめちゃ好きです。

 

  • NCT127 Arena Tour 'NEO CITY:JAPAN - The Origin'

 

 

映画

 

 映画の感想って基本Filmarksに書いてる(とはいえひとことくらいだけど)から改めて書くのもめんどくさいな…… WOWOW入りました。ジョジョ・ラビットよかったです!

 

 

 

「一生ファンでいる」って念書に判子押してもいい:『NCT127 Arena Tour 'NEO CITY:JAPAN - The Origin'』

2/23(日) 武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ

f:id:tsukko10:20200224164501j:image

バーミヤンで餃子に夢中になってたら開演5分前に滑り込み入場になったしFC抽選も終わっていたのがハイライト

 

SET LIST

  1. Cherry Bomb
  2. Come Back
  3. Limitless
  4. Chain
  5. Fly Away With Me
  6. Back 2 U(AM 01:27)
  7. City127
  8. Angel
  9. End to Start
  10. Kitchen Beat
  11. No Longer
  12. Long Slow Distance
  13. Regular
  14. Wake Up
  15. Baby Don't Like It
  16. UNDERCOVER
  17. Wakey-Wakey
  18. Good Thing
  19. Touch
  20. Heartbreaker
  21. Replay(PM 01:27)
  22. Fire Truck
  23. Superhuman

【EC】

  • Welcome To My Playground
  • Summer127
  • Highway to Heaven
  • 0Mile

 

感想

 こんなものを見たら「NCT127しか勝たんのだが?」ってイキリオタクになってしまってももう仕方がないのでは。セットリストは前回のツアーを軸に新曲を組み込んだ形となっていて、前回ツアーの映像を何度も繰り返し見ていた身でも新しいものとして楽しむことができた。

 

 NCT127のことを「K-POP界のミシュラン三つ星」と勝手に呼んでいる。顔よし曲よしスキルよし、と三拍子揃っているから。それを遺憾なく見せつけられた……だけにとどまらず、その高い期待値を軽々と超えてきた。完敗。NCT127が売れない世の中に用はない。それくらいのビッグマウスは許される。最高。

 

 個人的に一番衝撃を受けたのが歌の強さだった。バラード曲ってコンサートで魅せるのが難しいジャンルだと思うのだけど(中盤に挿入されているとそれまでのノリがリセットされてものすごく冷静な気持ちになることがある)、そこを難なくどころか「バラードが!!!ものすごく!!!よかった!!!」と言わしめるのだからすごい。特にドヨンの歌の表情の豊かさには目を瞠るものがあった。このひとこんなにうまかったのか、とひっくり返りそうになるほどよかった。そこに笑ってしまうほどうまいテイルの声が入ってきて、この両翼がいるってとんでもないことだなと。なにが怖いって、「NCT127はみんなうまい」という前提があるにもかかわらず、「うますぎる……」と思ってしまうところ。わたしの中でイリチルのボーカルは、芯となる大黒柱のテイル、色彩を加えるドヨン、縁の下から支えるジェヒョン 、隠し味のスパイスヘチャン、というイメージになりました。

 

 曲の強さにも改めて気がつけるのがコンサートのいいところ。前述のバラード曲全般のよさを噛みしめられたし、本当に捨て曲がない。すごいことです。この公演のハイライトを挙げろと言われたら〈Touch〉〜〈Replay〉!〈Touch〉の多幸感についてはもはや説明不要だけれど*1、それに続く〈Heartbreaker〉〈Replay〉の流れで「一生この空間にいたい」と思わされる上がりっぷりだった。特に〈Replay〉の"I just want to be loved"でペンライトでメンバーと客席がお互いを指すところ、歌詞の内容も相まって「あなたたちを応援しています」というのを合法的に伝えられる、それを肯定されているような気持ちになってたまらなかった。

 

 個人的に大好きな〈Dreaming〉*2はセトリ落ちしてしまって残念だったので、またどこかで聴けますように……

 

 MCや挨拶ではメンバーの日本語、特にイントネーションが明らかに上達していて、韓国語の勉強が滞りまくっている我が身を恥じた。忙しさ1万倍くらい違うのに。ジェヒョンが一生「声が小さい!」って煽ってきたんだけどハマってるのかな? 謎の男ジェヒョン……アンコールの声を気に入ったのか何回かC&Rしてご満悦だったジャニ、本当に一生かっこよくて今回めちゃくちゃ見てしまった。一応テヨンペンだけど、座席の問題もありあまり見れなかったのです。

 

 席はスタンド3階(アリーナが2階だから実質2階)下手後方列。センステの奥まったところでパフォーマンスされると下手側のメンバーが左右に配置された巨大スクリーンで見切れてしまうのと、せっかくアリトロでまわってきてくれても全く見えない(後者は会場の傾斜がゆるめなせいだと思う)。ただステージ上は近く感じたしよく見えて悪くなかった。それより問題なのは音響が……ひどい……音響死に死にの森と名付けたいくらいひどかった。アリーナとか正面だとましなのかも? ボーカルに感動したからこそしっかりした音響で聴きたい気持ちが大きい。

 

 SuperMとかDREAMとかもろもろのあれやこれやはあるけれど、NCT127が世に送り出すものに対してますます信頼しかない。そんな彼らが2nd Full Albumを!3月6日に!リリースします!!! 既にティーザーが出ていてそれがまたどれもこれも最高なので見て・聴いてください。以上宣伝でした。

 

 以上、「一生ファンでいる」って念書に判子押してもいい*3くらいのテンションでお送りしました。実際は一生とか怖くて口にできないけど、これからも日本ツアーがあれば行く程度のお茶の間ファンとしてNCT127のことを見守っていきたいのだぜ。

*1:

*2:作詞が元スーパーカーのジュンジなんだよ!!!

*3:

劇団☆新感線 ゲキ×シネ『髑髏城の七人 Season花』

STORY

 時は天正十八年(1590)。織田信長が死に、豊臣秀吉が天下を治めていたこの頃、都から遠く離れた関東の村々は<天魔王(成河)>率いる関東髑髏党に荒らされていた。

 この日も、とある村が髑髏党の鉄騎兵たちに襲われていたところに傷だらけの<沙霧(清野菜名)>が飛び込んでくる。彼女は、天魔王らの居城・髑髏城の抜け道が記された絵図面を持っていたために追われていたのだ。と、そこに派手な身なりの傾奇者たち・関八州荒武者隊の面々が登場する。先頭に立つのは、頭目の<兵庫(青木崇高)>だ。しかし仲間の<三五(河野まさと)>の裏切りにより、みるみるうちに窮地に陥る荒武者隊。そこへフラリと現れた着流し姿の男が、手にした大きな鉄煙管で鉄騎兵を叩きのめす。男は自らを<捨之介(小栗旬)>と名乗り、沙霧に傷の手当てをさせるため、兵庫と共に関東一の色里“無界の里”へと向かう。

 色里“無界”は宿場も兼ねているため人の出入りも賑やかで、その中には何か事情を隠していそうな怪しげな牢人<狸穴二郎衛門(近藤芳正)>らの姿もある。この色里一と評判の<極楽太夫(りょう)>は、「沙霧をかくまってほしい」という兵庫らの頼みを快く引き受けてくれた。

 その夜。店の裏で再び沙霧は髑髏党に襲われそうになるが、捨之介と“無界の里”の主<蘭兵衛(山本耕史)>がそれを阻む。そこに突然現れる、天魔王。実は捨之介と蘭兵衛と天魔王の三人は、ある時期、共に時間を過ごした間柄だったのだ。南蛮製の鎧と仮面を装着した天魔王には、捨之介の刀も蘭兵衛の短筒も歯が立たない。しかしこの場は、狸穴二郎衛門が間に割って入ったことで難を逃れられた。

 天魔王、そして髑髏党との戦いを覚悟した捨之介は山奥にこもる刀鍛冶<贋鉄斎(古田新太)>を訪ねて、無敵の鎧を叩き斬る刀、必殺の“斬鎧剣”を打ってほしいと頼み込む。

 しかしその頃、蘭兵衛は単身で髑髏城へ行こうとしていた。それに気づき、こっそりと後を追う沙霧。

 捨之介、蘭兵衛、天魔王が抱える深い縁(えにし)とは……。天魔王の謀略を、捨之介たちは阻止することができるのか……。

 

あらすじ長いな!

 

感想

 月のキャスト発表で若手俳優界が色めきたった覚えのある髑髏城、このたびのゲキシネ冬の陣で初入城です! 平間壮一くん出演の上弦の月は絶対見よう〜と思っていたのですが、ここにきて松岡広大くんがかわいくて仕方がなくなってきました。アミューズ所属の小柄で人好きのする身体能力高めな役者が好きなのかもしれない……『ねじまき鳥〜』の稽古場レポートが本当にかわいいんです。

 

▲成河に成河兄ぃ〜て呼びかけてるのとか超かわいい

 

 そんな松岡くんは下弦の月で平間くんと同じ霧丸役。というわけで、月はどっちも見るぞ〜

 

 

 さて、花ドクロの話をします。成河が出ているということで至急品川まで行ってきました。どうでもいいけど品川って駅から出たときの僻地感半端なくないですか。

 

 映画泥棒のあと、間髪入れずにはじまったイントロダクションで「髑髏城って時代物なんだよな」と気づいて構える。食傷気味なのもあるかもだけど、日本の時代物がどうも苦手です。文明開化以降は好きだから和服とか髪型が全然好きじゃないのかもしれません。ただ、髑髏城は時代物っちゃ時代物だけど、苦手意識もなにもかも洗い流してくれる大エンタメだから特に問題ありませんでした。わかりやすい筋書き+気持ちよく派手な演出で、観てて楽しくなれるのが髑髏城のよさ。感触としてはスーパーヒーロータイムが近いです。いや歌舞伎なのはわかってるけど。もしかして特撮が歌舞伎の流れを汲んでるのかも? わたしはどうしても特撮も不得手で完走できた試しがないのだけれど(特撮に限らず、朝ドラとか大河とか長期間やるドラマが全然続かない)、映画や舞台で1本にまとめたものを観るぶんには楽しめるんだな〜と思いました。

 

 筋書きは前述の通りわかりやすいので、難しく考えず、このキャラクターかわいいな〜かっこいいな〜って観られるとっつきやすさもゲキシネという形式にハマってていいな、と思いました。キャラクターも誤解を恐れず言えば定形って感じなんだけど、そこに役者本人の魅力も乗ってくることで没個性にならずみんな魅力的に見えてくる。小栗旬が「三途の川に捨之介!」って見得を切るの良すぎるでしょ。小栗旬、本当にスーパーヒーローでめちゃくちゃかっこよかったんです。小栗旬の持つ魅力があのスーパーヒーロー捨之介に繋がってるんだろうな〜という。一生長髪でいてほしい。

 

 蘭兵衛を山本耕史にやらせるのもあざとすぎてどうかと思う。1幕を観て「あーなるほどこれが鈴木拡樹がやる役ね!理解!」って思ったけど鈴木拡樹が天魔王で廣瀬智紀が蘭兵衛でした。観終わってから「まあそっちだよね、見当違いすみませんでした……」ってステアラ方面に謝った。わたしでも鈴木拡樹は天魔王にキャスティングします。

 

 基本かわいそうな男が好きなはずなのに、そこまで蘭兵衛に感情を抱かずにいるのは兵庫のことが好きすぎるからです。登場時点で「はい兵庫が最終的に一番いい男!!!」ってわかっちゃう青木崇高の魅力が悪い。兵庫と子分たちのことが愛おしすぎて、村焼きに来た蘭兵衛に対してガチ切れそしてガチ泣き。許さん。すでに福士誠治木村了の兵庫が楽しみすぎる。

 

 ところで、pixiv設定みたいなチートアイテムこと南蛮の不思議なお薬の飲ませ方、蘭兵衛には口移し(マイヤーリンクみたいで笑ってしまったんだけど)なのに捨之介にはそうじゃないの、完全に「地」の捨之介を下に見てるのがわかる対比なんですね。薬飲まされる小栗旬はセクシーです。

 

 自分が髑髏城に出るなら絶対に三五一択。あと古田新太は存在が無敵すぎるからよくないと思う。ずるいだろ。

 

 

 

ナショナル・シアター・ライヴ『リーマン・トリロジー』

 

原題:THE LEHMAN TRILOGY

作:ステファノ・マッシーニ

翻案:ベン・パワー

演出:サム・メンデス

主演:アダム・ゴドリー、サイモン・ラッセル・ビール、ベン・マイルズ

上演劇場:ピカデリー劇場(ロンドン)

上映時間:221 分(休憩含む)

 

STORY

 世界的な投資家リーマン一家が米国に移住した1844 年から2008年のリーマン・ショックが起こるまでの3世代にわたる栄光と衰退を描く舞台で、ナショナル・シアター上演時にはチケット完売を記録した注目作。主演の3人が約3時間にわたり、150 年以上にわたるリーマン家の歴史を演じ切る。

2020 年3月7日からはブロードウェイ公演も予定されている。

 

感想

 NTLをどこかで観てみたいなと思っていた+舞台美術が好きな感じだった+ちょうど日曜の上映回に空席があった、ということで観てきました。サム・メンデスの監督作は1本も観たことないし、映像で著名だからって舞台の演出がいいとも限らないし……って思ってたけど、そもそもサム・メンデスって舞台の演出家としてキャリアをはじめたんですね。いま調べた。

 

 正直、上演開始してしばらくは「失敗したかな」と思った。『リーマン・トリロジー』はすべて三人称の〈語り〉で進んでいく。圧倒的に会話劇が好きなわたしはもしかしたら合わないかもしれないし、合わないもののために4時間弱座っているのは、劇場ならいざ知らず、スクリーンだとかなりつらいものがある。しかも前日ソワレで舞台を観てからの早起きのせいでそもそも眠い。実際何度か怪しいところはあった……けれど、「これはリーマン・ブラザーズをめぐる叙事詩なんだ」と理解してからは、ぐいぐい引き込まれてしまった。

 

 わたしは「台詞のリフレイン」が大好きで、本作もそれがとても楽しい演目。だからどうしても字幕で観ていることが惜しまれた。リフレイン、音で入ってくるからこそ心地よい、ということにここで気がついた。演劇を観るときは言葉を文字に変換せず、音として捉えていることにも。英語ができないなりにヒアリングで観るように努めてみたけど、字幕があるとやっぱり頼ってしまう。

 

 3名の役者が語りと劇中のすべての登場人物をくるくる演じ分けるのも見どころ。アダム・ゴドリー55歳、サイモン・ラッセル・ビール59歳、ベン・マイルズ*153歳と、若くない男性なのだけど、彼らの演じる赤子も女性もとってもキュートだ!と思って観ていたので、笑い声(恐らく現地)が起こるのが結構謎だった。他の観客と笑うポイントが合わない問題・国際版が発生……。

 

 ストーリーは脚色は入ってるとはいえ歴史だからなんとも……リーマン・ショック以外の知識のないわたしにとっては「芝居でわかるアメリカの歴史」って感じ。カードの話とか綱渡り師の話とかバベルの塔とかの比喩表現は大好物。でも全部語りで解説されてしまうから、想像や解釈の入る余地はない。いわゆる「エモーショナル」を持ち込むことは許されないんだろうな、という印象を受けた。すべて演出のコントロール下に置かれてて折り目正しくて、それが逆にセクシー、みたいな。人間の感情の昂りを観たいがために演劇を観に行っているところがあるから、圧倒的熱量!エモーショナル!の力に捻じ伏せられるのも大好き(だからこそミュージカルを観る)だけど、こういうのも観てて心地よくて好きだなと改めて思いました。

 

 

 

 

*1:とてもキュート

『ねじまき鳥クロニクル』

2/15(土)ソワレ@東京芸術劇場プレイハウス

 

STORY

岡田トオルは妻のクミコとともに平穏な日々を過ごしていたが、猫の失踪や謎の女からの電話をきっかけに、奇妙な出来事に巻き込まれ、思いもよらない戦いの当事者となっていく――。

トオルは、姿を消した猫を探しにいった近所の空き地で、女子高生の笠原メイと出会う。トオルを“ねじまき鳥さん”と呼ぶ少女と主人公の間には不思議な絆が生まれていく。
そんな最中、トオルの妻のクミコが忽然と姿を消してしまう。クミコの兄・綿谷ノボルから連絡があり、クミコと離婚するよう一方的に告げられる。クミコに戻る意思はないと。
だが自らを“水の霊媒師”と称する加納マルタ、その妹クレタとの出会いによって、クミコ失踪の影にはノボルが関わっているという疑念は確信に変わる。そしてトオルは、もっと大きな何かに巻き込まれていることにも気づきはじめる。
何かに導かれるようにトオルは隣家の枯れた井戸にもぐり、クミコの意識に手をのばそうとする。クミコを取り戻す戦いは、いつしか、時代や場所を超越して、“悪”と対峙してきた“ねじまき鳥”たちの戦いとシンクロする。暴力とエロスの予感が世界をつつみ、探索の年代記が始まる。

“ねじまき鳥”はねじを巻き、世界のゆがみを正すことができるのか? トオルはクミコをとり戻すことができるのか―――。

 

CAST

演じる・歌う・踊る

成河/渡辺大知:岡田トオル
門脇麦:笠原メイ役
大貫勇輔:綿谷ノボル役 
徳永えり:加納クレタ/マルタ役
松岡広大:赤坂シナモン役 
成田亜佑美:岡田クミコ役 
さとうこうじ:牛河役
吹越満間宮中尉役 
銀粉蝶:赤坂ナツメグ

特に踊る

大宮大奨、加賀谷一肇、川合ロン、笹本龍史
東海林靖志、鈴木美奈子、西山友貴、皆川まゆむ 

演奏

大友良英、イトケン、江川良子

 

感想

 前提として、村上春樹が好きじゃない。とはいっても短編集を1冊読んだきりなのだけれど、女の描き方にえもいわれぬ気持ち悪さを感じてどうしても合わなかった。じゃあなんで観に行ったのかというと、「成河の芝居が観たい」とふと思ったからです。村上春樹という理由で一旦立ち止まったものの、あらゆるユース割(今回はU25があります)は使えるうちにガンガン使っていこうと思ったのと、メルマガで成河本人からのメッセージを受け取った*1のがダメ押しになって観にいくことに。

 

 結論、村上春樹やっぱり無理……という気持ちは変わらないけれど、舞台として面白い!という気持ちも反発せず共存するという不思議な体験になった。

 なにがいいって、演出がめちゃくちゃいい。演出はインバル・ピントと、マームとジプシー主宰の藤田さんのふたりが手がけているとのこと。逐一解説しろと言われたら言語化するのは(少なくともわたしには)難しいけれど、感覚としてはすとんと落ちてくる、そんな演出。

 

 まず〈踊り〉。劇中、登場人物たちは少しの移動の際も踊っていて、「普通に歩く」ということをほぼしない。エーッ人間ってそんな動きできるの!?と単純に興奮できる。身体性のオタクは本当に楽しく観られると思う。プールの場面でふと「超豪華な仮装大賞か?」と思ったり思わなかったりしたけどこれはわたしの問題。逆に考えると仮装大賞ってすごいのでは。

 

 そして〈歌〉。詳細を確認しないまま劇場に向かってしまったせいで歌が入ることすら知らず、そもそもオケがいることにびっくりしてしまったのだけれど、観てみて「そりゃ生オケになるわ」と納得した。音がこの芝居を成立させるうえでとても大事な要素だということがわかる。ただし、ミュージカルか?と言われたら首を捻る。これはミュージカルではない。渡辺大知の歌、特に初デート回想後の、全て受け入れよう、と歌うシーンが震えるくらい素晴らしかった(そういやこのひとって黒猫チェルシーでした)けど、ミュージカルだったら渡辺大知のこの歌にはならないと思う。じゃあなんなんですか?って言われたら答えられない謎ジャンル……ジャンルで括ること自体がナンセンスか。謎の手触りを謎のままに触り続けていく感覚。

 

 個人的には吹越満が自分の体験を語るところの演出が一番好き。灯りを操ることで場面が鮮やかに展開していくのが、記憶の中の話なのに臨場感と緊張感がビンビン伝わってきて最高。というか吹越満かっこよすぎるぜ……

 

 

 ストーリーに関しては、読み解こう!と思って臨んでいなかったから細かな読解はできない。Wキャストで演じられる岡田トオルは、渡辺大知=肉体のトオル、成河=意識のトオルであると言い切っていいかなとは思う。大して背格好似てないよねと思ってたら「大きい人と小さい人」って言われてたから敢えてなのか。1幕は肉体のトオルが見る世界が中心だから渡辺大知がメインで、2幕は意識の世界の話だから成河がメインに切り替わる。行方不明になった妻を取り戻しにゆくのは日本神話やギリシャ神話の黄泉の国の話を思い起こさせる。すごいどうでもいいけどこのふたつが似たような話になってるのは偶然って元型まわりの話を調べてたときに読みました。トオルが妻の姿を見ようとしない(妻も灯りを向けられたがらない)のもそれっぽい。

 

 それに加えて、遠藤周作が言う「死を志向する/下降する力」の話を思い出した。この世には罪と悪とがあって、罪っていうのは実は「X(=キリスト教徒の遠藤周作にとっては神)」を志向してるから救えるんだけど悪の方はひたすら下降してくから救えない、みたいなそういう……うろ覚えすぎるけど、そういうことを生涯考えてたらしい。悪の方もなんとか救えるんじゃないか?って試行錯誤してた形跡が面白いので、遠藤周作の小説以外も読んでください。話がそれた。笠原メイがトオルに語って聞かせた制御できない衝動の話が、遠藤周作の尊先*2、フランソワ・モーリヤックの『テレーズ・デスケル*3』の主人公テレーズが語る衝動の話とかぶるのも含めて、エッセンスだけ取り出したときに肌馴染みがいいテーマだった。ねじまき鳥とか占い師とかそのへんのことは知らん。ストーリー度外視しても演出のおかげでずっと楽しく観られるから大丈夫です。演出が合わなかったら終わりだけど。当日券出てるよ!

 

 最後に、下書きに「カテコで誰より早く捌ける成河がキュート」って書いてあったので共有しておきます。真ん中にいたのにサササササーッて消えていったから謎。

 

 

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*2:尊敬する先輩

*3:マジで面白いから読んでください