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お皿を割ってしまうなら、割れないお皿を買えばいい/映画『未成年だけどコドモじゃない』

misekodo.jp

 

 

何不自由なく育てられたお嬢様・折山香琳(平祐奈)が16歳の誕生日に両親からプレゼントされたのは“結婚”!しかも、親の決めた結婚相手は、香琳の初恋の相手で学校イチのイケメン・鶴木尚(中島健人)だった!幸せな結婚生活を夢見る香琳…しかし、現実は甘くない!結婚した途端に、学校では決して見せない冷たい表情で尚が言い放った言葉。「お前みたいな女、大っ嫌いなんだよな」この結婚は尚にとって、折山家の経済力を目的とした“愛のない”結婚だったのだ。しかも結婚していることは、学校では2人だけの秘密にしなければならない。“結婚したのに片想い”な香琳だが、尚への一途な想いと持ち前の天真爛漫な性格で、尚に好きになってもらえるよう慣れない家事や勉強にも果敢に挑戦していく。 そんなある日、絶対秘密の結婚が、香琳の幼馴染で同じ高校に通う超お金持ち・海老名五十鈴(知念侑李)に知られてしまう。香琳に想いを寄せている五十鈴は、尚に香琳と離婚するように迫る。果たして尚と香琳の結婚生活はどうなってしまうのか!?

 

感想

 

 最近D-BOYSのニコニコチャンネルで色々見ていまして、2、3作品ほど感想がたまっているんですけど、まずは早めにあげた方がよさそうなこちらから書きたいと思います。映画『未成年だけどコドモじゃない』、本当によかったので見てください(公開からかなり経ってるから役者のファンは既に見てるだろうけど)。

 

 正直、宣伝の感じからトンチキ映画を予想して観に行きました。役者を綺麗に撮ってくれて、それでちょっと笑えればいいかなぐらいの期待値だった。でも全然違くて、真面目~~~~~にいい映画だった。真面目な話、『みせコド』は、全てを肯定する香琳によって、尚先輩の呪いが解かれる……という、魂の救済の話だったんですよ。これは本当に宣伝詐欺って言っていいと思う。だってこれ、香琳が主人公だと思わせておいて、本当の主人公は尚先輩の方じゃないですか。

 

 尚先輩は、1000万の借金を残して消えた父親似の顔のせいで、母親から存在を否定され続けて育ってきました。それにより、彼自身も自分の存在を否定的にしか見れなくなっています。母親からかけられた、そして自分でかけた呪い。香琳が言っていたように、彼はなんでもできる人です。だけどその「なんでもできる」っていうのが、もし何とかして母親に認められたいって気持ちからきた努力の結果だとしたら、ものすごく痛ましい。香琳と結婚するのだって1000万の借金を肩代わりしてもらう+折山グループの跡取りになるためで、これも母親のためじゃないかと思うとなんだかなあと思う。しかも、尚先輩は否定され続けた大嫌いな自分の顔を利用してるんですよね。

 

 一方、香琳はひとりじゃ「なんにもできない」子でした。朝の支度も寝てる間に終わってる(あれ本当にうらやましい)。でも、香琳は両親や周囲の人々から存在を祝福され続けてきました。そんな香琳は、何に対しても肯定的な見方しかしません。というか、できません。それ以外知らないからです。彼女の存在こそがこの『みせコド』を特別なものにしている要因だと思います。『みせコド』の設定って少女漫画の王道が満載なんですけど(高校生で秘密の結婚、共同生活、最悪な第一印象、ヒロインを一途に想う幼馴染、元カノからのゆさぶり……とか)、香琳の存在が無二すぎてそれら全部が意味をなさなくなってるんです。たとえば、元カノから「あいつは借金を抱えてる、金目当てだ、顔につられただけならやめといた方がいい」って忠告されたら普通一回悩んでから乗り越えていくし、上手くいってない時に自分を一図に想ってくれてる幼馴染からプロポーズされたらちょっと迷いが出てなんなら一回付き合ってみるってなるところじゃないですか。でも、そこで「尚先輩のところにはお金が足りなくて、私のところにはお金が余ってるんだから、お金があるところからないところに移動させたらいいんじゃない?」「金目当てと顔目当て、ちょうどいい!」って言葉が自然と出てくるのが香琳*1。プロポーズに返事すらしないのが香琳。彼女は最後まで自分の感情に迷いがないっていうのに、宣伝ではまるで先輩と幼馴染の間で揺れるわがままな女みたいな印象にされてたのが本当に許せない。香琳をナメないでもらいたい。香琳の考え方全体的にすごく好きなんだけど、「割れないお皿を買えばいい」っていうのが特に好き。お皿がこの映画ポイントポイントで出てくる気がするんだけど(香琳が癇癪起こして割る、元カノが落とす、尚先輩の母親が割る)、お皿=人間関係の暗喩なんじゃないかな。普通、落としたり叩きつけたりしたら割れてしまうものだって諦めちゃうけど、香琳はそこを「割れない皿を買う」って方法で回避しちゃう。コロンブスの卵みたいなものじゃないですか?

 

 お気づきかと思いますけど、私はめちゃくちゃ香琳のことが好きです。とはいえ、最初の方は香琳のことを好きになれるかすごく不安でした。共同生活を始めた当初の彼女の行動にイラッとして、なんなんだ? と思ったし、最後までこの感じだとキツイな~~と思ってたけど、香琳はただ「知らない」だけなんだな、って気づいて仕方ないか……って許す気持ちになれて。元カノに持論展開して「バカなの?」って絶句されてるときには思わず笑ってしまったし、あ、これだんだん香琳のこと好きになってるな、って気づいて、よくよく考えたらこの香琳への感情の移り変わりが、尚先輩と合致してるんですよ。尚先輩が主人公だ! って初めに書いたけど、これって私が尚先輩と同じ視点で香琳を好きになっていってるからそう感じたんじゃないかな。二度目の結婚式で、尚先輩が香琳を「最高の女性」って表現するのも完全に同意だし。最後の方の香琳のビジュアルとか完全に聖母だったし。香琳の本質って最初から変わってないし、実は彼女自身が何か特別なことをしてるわけでもないんですよね*2。ずっと素直な気持ちを貫いているだけ。だけどそんな香琳が、尚先輩の気持ちをやさしくさせて、結果的に呪いから解いてしまった。香琳が壁をこえて尚先輩の方に飛び込んでいく姿が、その時香琳側から注がれる光が、二人の関係性を的確に表していて綺麗でした。

 

 リンリンのことも色々考えるけど、あれは元から覚悟を試すために言ったんですよね。リンリンは香琳が何を選択するかなんてわかりきってたし、そういう香琳を好きだった。わかった上で発破をかけつつ、香琳が自分に靡いてくれたら……って万が一の期待も見せてるのがちょっとかわいかった。リンリンの家ってどう見ても極道だし、彼もまあ色々過去にあるんじゃないかな~~。リンリンも過去に香琳に救われているのかもしれません。余談だけど鏑木とリンリンが仲良いのかわいい。

 

細かい部分では、

  • シルビアさんの歌が聴ける
  • 「テスト」「テスト?」「テスト」「テスト」「…テイラースウィフト」「友達だよ?」「すごいね…」のくだり
  • 香琳の「尚先輩のうそつき」って台詞は、鐘を鳴らした時の「一緒にいれたらいいな」だけじゃなくて「電気が止められた」ってことにもかかってる

のが良かったな〜と思います。

 

 なんかもうしっちゃかめっちゃかですけど、とにかく私が『みせコド』をめっちゃ楽しんで見たんだぞ! ということを上演中に残しておきたかった。尚先輩と香琳の関係性を踏まえて主題歌の「僕らはきっとただ幸せになるため生まれてきた」っていうのを聴くとだいぶグッとくる。尚先輩の魂が救済されて本当に良かったです。まだ見てない人は見たほうがいいと思う。上演ももう残り少ないけど……。

 

 

*1:最後まで香琳がこの「金/顔目当て」っていうのを一切否定しなかったのが本当に良かったです

*2:もちろん生活能力が身についたりはしたけど